出水市 地域おこし協力隊 山川 温子さん
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2024年4月、佐賀県から鹿児島県指宿市へ移住。
達哉さんのUターンをきっかけに、夫婦で新たな生活をスタートした。
栞さんは大分県別府市出身。自衛隊勤務を経て歯科衛生士として働きながら調理師免許を取得。アウトドアやキャンプをきっかけに始めたコーヒー焙煎を、現在は達哉さんと二人で取り組み、地域のマルシェやイベントへの出店を通して地域との交流を広げている。
達哉さんは鹿児島県指宿市出身。長年自衛隊に勤務した後、2024年に故郷へUターン。実家の農業を手伝いながら、妻とともにコーヒー焙煎に携わり、地元の若者会にも参加するなど、地域コミュニティとのつながりを深めている。
夫婦で取り組むコーヒー焙煎を軸に、人との出会いや会話を大切にしながら、指宿での暮らしを丁寧に育んでいる。
栞さん:
達哉さんの実家が指宿にあり、年に一度くらいは帰省していました。そのたびに「いい場所だな」と感じていて。達哉さんの中に「いずれは指宿に戻りたい」という思いがあることも分かっていたので、私も自然と「じゃあ、いいよ」という気持ちになっていきました。
大きな決断というより、気持ちが少しずつ同じ方向にそろっていった感覚です。
栞さん:
やっぱり一番は交通の便でした。指宿は鹿児島の中でも南にあって、「車がないと不便なのでは」というイメージが強くて。特に大分の実家に帰ることを考えると不安でしたが、調べてみるとバスや電車もあり、車がなくても移動できると分かって。
「ちゃんと考えれば暮らしていける」と思えたことが、背中を押してくれました。
達哉さん:
妻は、公共交通機関へのアクセスを一番に考えていました。将来を見据えると、車がなくても移動できる場所であることは大切でしたね。
栞さん:
家を買うにしても借りるにしても、長く住む前提だったので、最初から条件を絞って探しました。半年ほどかけて物件を探して、結果的に、達哉さんの実家から徒歩10分ほどの場所に住まいを見つけられたのは幸運だったと思います。
栞さん:
はい、サポートがあることはとても心強くて、「一歩踏み出そう」と思えました。もし何もなかったら、「いいな」と思っても、移住を決めるまでに至らない人もいるのではと思います。市役所の移住担当の方と、地域おこし協力隊の方が二人体制でサポートしてくださって、地元目線と移住者目線の両方から、良い面だけではない地域の暮らしについて教えてもらえました。後から知るより、最初に現実的な話を聞けたことで、覚悟を持って移住できたと思います。

達哉さん:
本当にびっくりしました。家の前を通る人、通る人がみんな声をかけてくれるんです。「こんにちは」「何してるね?」って。
佐賀で暮らしていた頃は、正直そこまでご近所と話すことはなかったので、その距離感の違いには驚きましたね。
栞さん:
佐賀では、地域で顔を合わせるイベント自体が少なくて。夏祭りや運動会もなく、関係性は職場か学校が中心でした。指宿に来てからは、イベントやお店での会話をきっかけに、自然と知り合いが増えていく。その空気がすごく新鮮で、楽しいです。
達哉さん:
移住する2〜3年前、コロナ禍の頃です。最初は趣味で、手網で豆を焙煎していました。そこから焙煎機を導入し、周りのコーヒー屋さんに教えてもらいながら、少しずつ続けてきました。
栞さん:
イベントやマルシェが好きで、指宿に来たらそういう場がたくさんあったんです。当時はコーヒー屋さんもまだ少なくて、「出店してみたら面白いかもね」と。最初は本当に軽い気持ちでした。もともとカフェはやってみたかったので、歯科衛生士時代に調理師免許を取得していたのですが、それも活かせる機会だねと。
栞さん:
指宿駅前にある「casa Vecchio」というお店でのイベントに出たのが最初でした。そこから少しずつつながりが広がり、声をかけてもらえるようになって。今では顔なじみも増え、マルシェが居心地のいい場所になっています。

達哉さん:
同窓会に誘われたのが、地域との関わりの最初のきっかけでした。30年近く会っていなかったので、正直なところ最初はあまり気が進まなかったですね。ただ、周りから声をかけてもらい、思い切って参加してみることにしました。
実際に行ってみると、地元に残っている人だけでなく、私と同じように一度外に出てから戻ってきた人たちとも再会でき、あらためて人のつながりを感じました。一方で、翌日にはまた県外へ戻っていく人も多く、地元に残っている人が決して多くないという現実も実感しました。
その後、地元の後輩たちから声をかけてもらい、彼らが作っている会に参加することになりました。年齢的には対象外でしたが、「やりたい気持ちがあるなら年齢は関係ない」と受け入れてもらい、現在はモルックや日本酒会など、さまざまな活動に参加しています。
ここ1〜2年で、地域の中に自然なつながりができ、「昔からいたんじゃないか」と勘違いしてしまうほど溶け込めていることが嬉しいです。
達哉さん:
近所のおばちゃんが、通りがかりに「キュウリを噛まんか(食べませんか?)」と言って、玄関先に置いていくことがあるんです。
栞さん:
最初に聞いたときは、「そんなこと本当にあるの?」って思いました。昔話の世界だと思っていたので、まさか自分たちの暮らしの中で起こるとは思っていなくて。
達哉さん:
自分は地元なので、そういうのは分かってはいたのですが、実際に体験すると「本当にあるんだな」とあらためて感じます。
栞さん:
指宿では、観光客も地元の人も、みんな同じように声をかけてくれる。その距離感がとても自然だなと思います。
栞さん:
大きく変わりました。正直に言うと、移住する前は、地域との関わりに対してあまり良いイメージを持っていなかったんです。ご近所付き合いが濃いと、いろいろ知られてしまうのではないか、干渉されるのではないか。そんな不安ばかりを思い浮かべていました。
達哉さん:
来たばかりの頃は、「関わりたくない気持ちがあるかも」と妻は言っていました。でも今は、その頃とは真逆だと思います。
栞さん:
家を探していたときも、「隣の人はどんな人なんだろう」「距離感は大丈夫かな」と、そんなことばかり気にしていました。でも、実際に暮らしてみると、そうした心配はほとんど必要ありませんでした。

栞さん:
影響は大きかったと思います。もし私一人で移住していたら、もっと時間がかかっていたと思いますし、最初の距離感も違っていた気がします。
達哉さんの地元が指宿だったことで、「誰々さんのところのお嫁さん」という形で受け入れてもらえて、思っていたよりも早く、ぐっと距離が縮まった感覚がありました。
達哉さん:
地元だと、「誰々さんちの息子」という形で顔を知ってもらっているので、その延長で受け入れてもらえる部分はありますね。実家が農業をしていることもあって、親世代のつながりも残っていて。戻ってきたこと自体を喜んでくれる人が多かったです。
栞さん:
家族もとても喜んでくれましたし、地域の中に、最初から少し居場所があるような感覚は、安心につながっていたと思います。
栞さん:
たまて箱温泉(ヘルシーランド露天風呂「たまて箱温泉」)です。
初めて行ったとき、開聞岳を望みながら、海と湯舟がつながって見える景色に衝撃を受けました。「あ、ここに住もう」と、そのとき心に決めた気がします。

栞さん:
今、自店舗を持つための準備をしているのですが、そこは私たちのコーヒーを通して、「指宿に来てよかった」と思ってもらえる場にしたいと思っています。
コーヒーだけでなく、地元の食材を使った料理や、指宿らしいお土産も一緒に紹介して、会話ごと持ち帰ってもらえたらうれしいですね。
達哉さん:
お店を持っても、マルシェへの出店はこれまで通り続けていきたいと思っています。そして、将来的には、妻が歯科衛生士の時にやっていたように、病院や施設に出向き、コーヒーを提供できたらいいなと思っています。
栞さん:
歯科衛生士として働いていたときは、障害のある方が入居する施設やグループホームに関わってきました。コロナ禍で外出が難しくなる中、利用者さんも職員さんも気持ちが沈んでいくのを感じていて。
そんなとき、コーヒーやお菓子の話をすると、自然と表情が明るくなるんです。その様子を見て、「こういう時間を届けたい」と思うようになりました。
職員さんたちの日々の業務の中では、なかなか難しいことなので、私たちがコーヒー屋として施設や病院に出向き、短い時間でもコーヒーを淹れて、お話をする。
外から誰かが来てくれる、その時間自体が特別になる。
いずれは、そんな場をつくっていけたら理想です。

栞さん:
人とのつながりを広げたいと思っている方には、とても向いている場所だと思います。 自分から少し動けば、話を聞いてくれて、次につないでくれる人がいる。そんな空気が、指宿にはあると感じています。 私自身も、移住を通して価値観が大きく変わりました。これからは、「どこに行けばいいか迷ったら、まずここに来てください」と言えるように、私たち自身も地域をもっと知っていきたいですね。
達哉さん:
Uターンしてみると、昔見ていた風景が少し違って見えることがあります。 人が減ったと感じる場所もありますが、だからこそ「何かできることはないかな」と考えるようになりました。 以前は仕事中心で、自分から地域に関わるタイプではなかったのですが、マルシェや地域の集まりに行っていろいろな人の話を聞くうちに、「手伝いたい」「仲間に入りたい」と思うようになりました。今は、地域の人たちとつながる時間そのものが楽しく、毎日を前向きに過ごせている実感があります。
UMIKAZE COFFEE ROASTERS:https://www.instagram.com/umikaze_coffee_roasters/