南さつま市_神園一俊さん
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2011年頃から仕事の関係上鹿児島を訪れる機会は何度かありましたが、魅力を感じつつも、正直、特別に意識することはありませんでした。後に結婚する鹿児島市出身の妻との出逢いにより鹿児島に興味を持つように。
鹿児島は、お酒や料理が美味しいですし、たくさんの魅力がありますが、何より温かい人が多いんですよね。ちゃんと筋を通してる人に対してはとても手厚く、義理人情を重んじるところをすごく感じて。侍の気質?みたいなのを感じるというか(笑)。
私の出身地である静岡の人たちも、もちろん温かいのだけど、鹿児島と比べてしまうと良くも悪くもドライなところがあって。ある日、鹿児島の小学校の前を通った時に、大きく掲げられた標語を見ました。そこに書かれていたのはとてもシンプルで、「うそ言うな!」。
かなりのインパクトでしたね(笑)
それを見た時、子育てするならここだな!と思いました。当時、私は実家の家業を兄と私の学生時代からの友人との3本柱で切り盛りしていました。私が移住するということは、その3本柱の一本が抜ける訳だから、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだったけれど、「一生に一度のことなので応援してほしい」と説得しました。「いずれは鹿児島に…」と考えていたので、それなら早い方がいいなと。今の仕事を活かし、ここなら勝負できるな!と移住を決意しました。
移住するに際し、暮らしや文化の違いに関して全く不安はありませんでした。唯一不安を感じていたとするならば、『鹿児島で起業して本当に食べていけるのか…』ということだけでしょうか。あとは、甘い醤油くらいかな(笑)
鹿児島に移り住んでからの感想は、正直移住前とあまり変わっていないかな?当時から、鹿児島を遠く感じたことはなかったので。ただ、ひとつだけ言うならば、県民性なのか、礼儀正しい人が多いですよね。
他の地方の人たちって、例えば同じ“社長”という肩書きであったとしても、相手が年下だと分かった途端、タメ口になったりするんですよね(笑)。もちろん、それに対してネガティブな感情があるわけではありませんが。でも、鹿児島の人たちは、年下だと分かっても決してそれまでの姿勢を変えない。たまには気さくに話しかけてほしいので、ちょっと寂しく感じることもあるけれど(笑)。それが、鹿児島の魅力でもあるのかな。あとは、労働力の質がとても高いと思いますね。
私の会社には、正社員・パート社員も含め22人のメンバーが在籍していますが、仕事の精度や早さ、効率・能力、そして仲の良さ、全てにおいてとにかく凄い!「うちのスタッフは日本一!」だと本心から感じています。
地元に溶け込むコツは、とにかく「積極的に自分から話しかけること」かな。それと鹿児島に限ったことではないと思いますが、挨拶・礼儀を重んじることです。
私は人と話すことが好きなので、それらのハードルは高くなかったし、すぐに溶け込むことができたと思っています。
「お気に入りの場所」は本社の社長室かな(笑)。
ここから全てが始まった“始まりの場所”なので。例えば、これから先、会社が大きくなり、どんなに立派な建物・社長室ができたとしても、見知らぬ土地でゼロから始めたこの“賃貸の和室”がずっとお気に入りだと思います。
「お気に入りの風景」は、自宅から見る桜島と、義父の故郷である根占から見る開聞岳です!
現在は、茶商・茶生産家・商社などからお茶を預かり、ティーバッグに加工してお返しする受託の業務がメインですが、量販店さん向けに、自分達で商品を作り、卸す業務も行なっています。
私は、鹿児島のお茶は、色々な意味で日本一だと思っています。静岡出身の私が言うのだから間違いはないかと。ただ、今は残念なことに、“鹿児島のお茶”として出回る販路が圧倒的に少ないのが現実です。実際は、鹿児島で多くのお茶が作られ、全国に流通しているのにも関わらず、「原料の供給地」となっている側面が強いのです。
あくまで私個人の認識としてですが、理由のひとつは「後発」だから。鹿児島は、昭和40年代位から本格的に茶業に力を入れ始めました。それが故に、古くから茶業を本格的に営んでいた産地に、既にお客さんを掴まれており、多くの直接的な販路を掴むことができていない印象です。それは、義理人情を大切にする鹿児島の県民性と考えれば良いところでもあるのかもしれないけれど、原料をそのまま卸しているだけでは、なかなか利益を上げづらいと思います。そして、これまで“供給地”としての姿勢を崩さずに来たので、最終商品にまで仕上げる小分け技術というものがそれほど発展してきませんでした。
私の目標のひとつは、量販向けに大量に、そしてコストを掛けずに最終商品を作れるノウハウを身につけること。現在、谷山港にある本社工場では、1分間に約80個のティーバッグを作ることができる機械を6台導入していますが、新設する南栄工場では、1分間に約140個製造できる機械を九州で初めて導入し、9月から稼働を始めます。
これは私にとって大きなチャレンジであり、とても意味のあること。鹿児島から全国に“鹿児島のお茶”を直接届けることができるようになるのは大きな成果だと感じています。県内・九州の茶業界を変えていきたい…。同じ業界にいるみんなが笑えるように。笑顔になれる人が1人でも増えるように。
私には静岡にいる頃からとてもお世話になっている人がいます。整体院を複数店舗経営しながら、その枠を超えて人々の幸せな生き方までをトータル的にサポートされている本当に凄い先生なのですが、彼が若かりし頃病院で検査技師の仕事をしていた時、患者さんであるおじいちゃん達に “これまでの人生、幸せでしたか?”と尋ねてまわったことがあるそうです。しかし、驚くべきことにほとんどの人たちが“幸せだった”との回答はしなかったそうです。
みんな口にするのは、“あの時こうしておけば良かった…”という後悔の念ばかり。つまり、ほとんどの人がチャレンジさえしなかったことを後悔していたと言うのです。しかし、不思議と、チャレンジして、失敗したことへの後悔はなかったとか。
何をしたい・何ができる・どこに移住したい…なんて事は人それぞれだけど、私たちはこの世の中を楽しむために生まれて来たのだから、無駄に時間潰してる暇はないんですよね!
失敗しても死んだりしないから、私は死ぬ一週間くらい前まではチャレンジを続けている自分でありたい。だからみなさんも恐れず、怯まず!飛び込んでみたらいかがでしょうか。
株式会社カゴシマパッカーズのHP https://kpackers.jp/
鹿児島市 移住促進ポータルサイト「かごしま移住ライフ」